新型コロナウイルスによる肺炎が世界中で流行しています。
肺炎とは「ウイルスや細菌などの病原微生物に感染し、これらが肺の中で増殖をはじめ、炎症が引き起こされた状態」のことで、日本人の死因の第3位です。
今回は、一般的な肺炎と新型コロナウイルスによる肺炎、それぞれの診断や治療について触れていきます。
肺炎の検査・診断
症状や身体所見と、血液検査、胸部X線・CT検査などを行い、肺炎の診断をします。
それと同時に、重症度の判定と、原因微生物の特定検査が行われます。
・血液検査 :炎症の程度や血中の酸素量を調べます。
・胸部X線・CT検査:肺に炎症があると、肺炎特有の白い影が見えます。
・原因微生物の特定検査:肺炎の原因菌を特定するために、尿や血液の抗原・抗体を調べたり、痰の中の菌を培養して調べます。
肺炎の治療
治療の基本は、保温して安静にし、水分と栄養をしっかり摂取することです。
その他に、対症療法と原因療法を行います。
対症療法とは、症状を緩和させる治療法です。
咳止めや解熱剤、痰を出しやすくする薬、息苦しさや咳をやわらげる気管支拡張薬などが、症状に応じて処方されます。
原因療法では、肺炎の原因となった細菌やウイルスに対する治療を行います。
細菌性肺炎やマイコプラズマ肺炎に対しては、抗生物質を使用します。
ウイルス性肺炎には抗ウイルス剤(インフルエンザなど、まだ極々一部のウイルスにしか効果がありません)が治療薬として処方されます。
軽症で全身状態がよい場合や、若年層で他に疾患をもっていなければ、通院で内服薬を飲みながら治療するケースもあります。
中等症以上の肺炎、小さな子どもや高齢者、基礎疾患をもっている場合などでは、基本的に入院して治療が行われます。
新型コロナウイルスによる肺炎の検査・診断
PCR検査のほか、肺炎の重症度を評価する目的で、酸素飽和度の測定や、血液検査、胸部X線・CT検査などが行われます。
酸素飽和度は、指先に装着して体内の酸素の量を測定するパルスオキシメーターという装置を使って測定し、この数値に基づいて酸素の吸入が必要か、人工呼吸器が必要か判断されます。
<重症度の分類>
・軽症 :咳のみで息切れがなく、呼吸器症状がない状態
・中等症Ⅰ(呼吸不全なし):息切れ、肺炎所見
・中等症Ⅱ(呼吸不全あり):酸素投与が必要
・重症 :ICUに入室または人工呼吸器が必要
(※)新型コロナウイルス感染症診療の手引き第3版より抜粋
新型コロナウイルスによる肺炎の治療
入院時に、呼吸状態に基づいた「重症度の評価」が行われます。
軽症の場合は、対症療法(熱や咳などの症状を抑える治療)で、解熱剤や咳止めの投与、点滴等が実施されます。
中等症(呼吸不全あり)では、酸素を吸入します。
中等症以上では、抗ウイルス薬を使用することもあります。
重症の場合には、人工呼吸器やECMO(人工肺とポンプで肺の代替を行う装置)を用いて、体内に酸素を送り込みます。