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700万人が認知症の時代へ
今から7年後の2025年・・・
65歳以上の5人に1人は認知症になると言われています。
認知症とは、「脳に障害が起きて認知機能が低下し、日常生活に支障が出た状態」です。
認知症の中で6割以上を占めているのが、アルツハイマー型認知症(アルツハイマー病)です。
アルツハイマー病は、「アミロイドベータ」というタンパク質が脳内に蓄積し、脳の神経細胞がダメージを受けて死んでいくことで、認知機能が少しずつ低下していきます。
アミロイドベータは、認知症を発症する約20年も前から少しずつ脳内に蓄積しはじめます。
しかし、その時点では症状はないため、本人が気づかないまま脳内では蓄積が進んでいき、やがて認知症を発症します。
実は認知症は、早い段階から脳内で変化が起き始めているのですが、実際に発症するのは約20年後・・・という、ゆっくり時間をかけて進行する病気なんです。
それにしても、発症の20年も前から変化が起きているって、相当な時間差ですよね。
アミロイドベータを調べるには?
アルツハイマー病の原因物質である「アミロイドベータ」を調べる方法は、現在2種類あります。
1つはPET検査、もう1つは脳脊髄液の検査です。
PET検査は、放射能を含む薬剤を用いて、脳内のアミロイドベータの蓄積量を調べる画像検査です。
費用が十数万円から数十万円以上とかなり高額な検査です。
脳脊髄液の検査は、腰椎と腰骨の間に針を刺して、脳脊髄液を採取して調べる方法です。
針を刺した部位の痛みが数日続くこともあるなど、侵襲性の高い(身体に及ぼす物理的負担や影響が大きい)検査です。
現在のアミロイドベータを調べる方法は、高額であったり、侵襲性が高いといった問題があります。
わずか0.5ccの血液でアルツハイマー病を
ノーベル賞を受賞した田中耕一さんを含む研究チームが、「アルツハイマー病の原因物質の蓄積を血液検査で判定する方法を確立した」ことを発表しました。
発表したのは、国立長寿医療研究センターと、島津製作所の田中耕一さんなどの研究チームです。
血液中に含まれるタンパク質から、アミロイドベータに関連する3種類の物質を組み合わせて分析することで、脳内にアミロイドベータが蓄積しているかどうかを高精度で推定できるとのことです。
ノーベル賞の受賞にもつながった質量分析の技術を利用して調べます。
【画期的なこと】
1.PET検査の結果と9割が一致
今回の検査方法で、日本やオーストラリアの高齢者計232人の血液を分析し、PET検査(脳の画像検査)で測定したアミロイドベータの蓄積の有無と比較したところ、約9割の確率で一致していたとのことです。
また、認知機能が正常な人の蓄積も正しく見分けられたとのこと。
2.わずかな量の血液で蓄積の有無を判定できるのは、世界初
0.5ccの血液で、アルツハイマー病の原因物質が脳に蓄積しているかどうかを調べるという今回の検査方法は、世界で初めて確立された技術です。
通常の定期健康診断では、10〜15mlを採血しています。
0.5ccということは、少なくとも二十分の一の量ということになります。
採血すると言っても、わずかな量であれば、検査を受ける人の負担が少なくて済みますね。
今後の活用に期待が膨らむ
開発された手法は血液検査のため、身体への負担が少なく、低コストで大規模な検査が可能になるとのことです。
また、認知症の診断の補助だけでなく、発症前に認知症になりやすい人を見つけることにも期待が出来ます。
このニュースを受けて、早く実用化してほしい、安価で広く普及してほしい、健康診断や人間ドックに入れてほしい、早く見つかっても治療する方法がないなら困る、などが世間の声としてありました。
現状の課題として、認知症には根本的な治療方法がない、ということがあります。
認知症の進行を一定期間防ぐ薬はあるものの、根本的な治療薬はまだありません。
一方で、早めに見つけて適切な予防や対策を行えれば、認知症の発症を防いだり遅らせることができる、ということが最近の研究で分かってきています。
今後、認知症の治療や予防にも繋がっていってほしいです。