アナフィラキシーとは
「アナフィラキシー」は、アレルゲンを食べる・飲む・吸うなどしてから、極めて短時間で全身に症状が現れる、重度なアレルギー反応のひとつです。
特徴としては、特定の部位ではなく、複数の臓器(皮膚、粘膜、呼吸器、消化器、循環器など)にわたって、急速に症状が現れることです。
日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドラインによれば、「アレルゲン等の侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されています。
症状
アナフィラキシーの代表的な症状に、全身性のじんましん、呼吸困難、血圧低下等があります。
最も多い症状としては、じんましん・赤く腫れる・かゆみなどの「皮膚の症状」です。
その他にも、粘膜、呼吸器、消化器、循環器、神経などに症状が現れます。
皮膚 |
粘膜 |
呼吸器 |
消化器 |
循環器 |
神経 |
・じんましん |
・目や口内のかゆみ |
・せき という呼吸音 |
・嘔吐 |
・動悸 |
・意識障害 |
発生と原因
アナフィラキシーが発生する仕組みは、大きく分けて以下の4つに分類されます。
①IgE抗体が関与する免疫学的機序
②IgE抗体が関与しない免疫学的機序
③非免疫学的機序(マスト細胞を直接活性化する場合など)
④特発性アナフィラキシー(明らかな誘引が存在しない)
アナフィラキシーの多くは、「IgE抗体が関与する免疫学的機序」により発生しています。
代表的な原因物質は食べ物、蜂などの毒、薬剤です。
薬剤は、IGE抗体が関与しない免疫学的機序や、非免疫学的機序によっても、アナフィラキシーの原因になることがあります。
原因物質
アナフィラキシーが発生する仕組み別に、原因物質をまとめました。
①IgE抗体が関与する免疫学的機序
原因 |
具体例 |
食べ物 |
鶏卵、牛乳、小麦、甲殻類、ソバ、ピーナッツ、ナッツ類、ゴマ、大豆、魚、果物など |
毒 |
蜂、アリなど |
薬剤 |
ペニシリンなどの抗生物質、アスピリンなどの解熱鎮痛剤、医療機関で検査に用いられる造影剤など |
その他 |
天然ゴムラテックス、職業性アレルゲン、環境アレルゲン、*食物+運動など |
*アレルギーの原因となる食べ物を食べてから4~6時間以内に運動することによって、アナフィラキシーが起こることを「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」または「運動誘発性アナフィラキシー」と呼んでいます。
この場合、原因となる食べ物を食べただけでは症状は出ませんが、運動が組み合わさることによって、アナフィラキシーが起きます。
②IgE抗体が関与しない免疫学的機序
原因 |
具体例 |
薬剤 |
解熱鎮痛剤、造影剤、デキストランなど |
③非免疫学的機序
原因 |
具体例 |
身体的要因 |
運動、低温、高温、日光など |
アルコール |
|
薬剤 |
オピオイド鎮痛薬(医療用麻薬)など |
④特発性アナフィラキシー
原因 |
具体例 |
不明 |
これまで認識されていないアレルゲンの可能性など |
発症までの期間
アナフィラキシーの原因となる物質によって、体内に入り込むまでの過程が違うため、発症までの時間が異なります。
・食べ物の場合
口から食道を通って、胃や腸で消化・吸収するという過程を経るため、アナフィラキシーの症状が出るまでに30分〜1時間程度かかります。
・蜂の場合
皮膚から蜂毒のアレルゲンが直接入ってくるため、刺されてから数分〜15分程度で症状が出ます。
アナフィラキシーが起きたら
1.エピペンを注射する
「エピペン(アドレナリン自己注射薬)」は基本的に自分で注射します。
本人が打てない場合、保護者、救急救命士、保育士、教職員が人命救助のために注射することは可能です。
それ以外の人は、注射を許可されていないため、本人が自分で注射するのを補助するにとどめてください。
2.救急車を呼ぶ
3.安静にする
救急車等が到着するまでは、あお向けで、足を高くする姿勢で、安静にしていてください。
嘔吐してもいいように、顔を横に向けておき、吐いたものをのどに詰まらせないようにしましょう。
エピペンによる処置
アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。
アドレナリンの自己注射薬である「エピペン」は治療として有効ですが、アナフィラキシーを根本的に治療するものではなく、あくまでも対症療法です。
エピペンを応急処置として使った後は、医療機関へ受診してください。
アナフィラキシーの症状は、1~8時間後に再発する場合があるため、症状が良くなっても医師による治療が必要です。
アナフィラキシーショック
アナフィラキシーに「血圧低下や意識障害を伴う場合」を、アナフィラキシーショックと言います。
アナフィラキシーショックは発症が非常に急激で、短時間で呼吸停止または心停止に至ることがあります。
気道の閉塞を伴うため、気道の確保と酸素吸入が重要になります。初期対応が特に重要な疾患のひとつです。
アナフィラキシーが原因で心停止に至った例の、心停止までの平均時間は、薬物で5分、蜂毒が15分、食物は30分と言われています。
(※いずれの場合も、アナフィラキシーを発症したからといって、必ず心停止に至るわけではありません。)